短編集の漫画『どこかでだれかも食べている』を再読しました。
食べ物に関するショートストーリーが21種類、詰まっています。
食べることは生きること。
人が生活していくうえで必要不可欠であり、本能のひとつです。人間にとって“当たり前”の行為、けれど意外と人によって違う部分でもあります。
好き嫌いはもちろん、どのように食べていた(食べている)のか、記憶と比較して読んでみると面白い漫画です。
好きな話について、4つ語ります。(ネタばれ有り)
「1皿め プリン・ヨーグルト」
3個入りのプリンやヨーグルト。
あれは平日のお昼、お父さんがお仕事に行っている間に、お母さんとお子さん2人で食べるために3個入りなのだと聞いたことがあります。

仲間外れにされてしまうお父さんかわいそう……。
この物語では、姉がプリン2個・ヨーグルト1個、妹がプリン1個・ヨーグルト2個と分けています。
子供たちだけで食べる、ということが筆者にとっては新鮮でした。
この分け方を決めていた“お姉ちゃん”は大きくなり、“お母さん”になりました。
我が子2人はどう分けるのか見ていると、プリンをお母さんに、ヨーグルトをお父さんにあげて、自分たちは両方1個ずつ。「そうきたか~」とおもう、お母さんと筆者。
ちなみに4人家族の筆者は、3個入りのプリンの場合、2パック購入していました。つまり、プリンを6個用意していたのです。
きょうだい2人は2個もらって、両親は1個ずつ。

なんだか算数の時間のようですね。
「2皿め お弁当屋」
日替わりでいろんなおかずを楽しめるお弁当屋さん、「やまみ」。そこで働く男性の目線の物語。
先ずこのお店が魅力的です。
おかずは副菜2種・メイン1種を好きに選ぶことができて、ごはんは白米・雑穀米・季節の炊き込みごはんの3種の中からひとつ選べます。
テイクアウトのみ。ショーケースに入っているものだけの販売のようですが、種類は豊富の様子。
毎日行っても飽きないお店ですね。
さて。
そこの男性店員さんは、「今日のメニューならこの組み合わせがいいな」と考えています。そこへやってきた女性が、全く一緒のチョイスをします。
お店を気に入った女性は別の日も来て、そのたびに店員さんと好みが一致。

食の好みが一緒の人が彼女だったら……。
ほんのり恋心を抱く店員さん。

食の好みって重要ですよね
恋人にしても家族にしても。
食事は必要不可欠だから、食べ方が汚いとか好き嫌いが多いとか店員さんに対して横暴だとか、そういう人だったら恋は冷めてしまいます。
蛇足 長続きする秘訣
ここから完全に話が脱線するのですけれど。
ずっと一緒に居られる人って、

きれいもきたないも見せることができる人なのでは……?
とおもいました。
人間は三大欲求から離れることができません。
個人的な意見ですが、どの欲求もきたない部分があるとおもいます。だから、一緒に過ごす人にはその姿をさらさなければなりません。
きれいな自分だけを見せて生きていきたいけれど。

“生きる”ってそこまできれいなものでしょうか……。
どんなにきたなくても醜くても情けなくても、地べたを這ってでも、なんとか暮らしていかなくてはならない状況になることがあります。そんな状況にならないほうが良いのはもちろんだけれど。自分ではどうにもならないこともあります。
心の問題なのか身体の問題なのか、
自分以外の問題なのか、
その時によって違いますが。
無理なく一緒に過ごせる人のほうが長続きするのではないかなぁ、とおもいます。
※あくまで個人的な考えです。
一方で、誰とも一緒に過ごさない、その選択も有りだとおもいます。
「12皿め 温泉まんじゅう」
休日出勤に疲れて帰宅した女性のもとに届いたのは、温泉まんじゅう。
仕事で温泉に行けない女性のために、あらかじめ時間を指定して両親が送ってくれていたのです。両親は旅行先の温泉宿でお茶の時間。
場所は離れていても、同じおまんじゅうを食べてほっこりするというお話。
これを読んで、最近流行りのオンライン飲み会を連想しました。直接会う代わりに、インターネットの力を借りて同じ時間を共有するのです。
現在のオンライン飲み会(やお茶会)では、食べ物や飲み物は各自で用意していますが、「12皿め」のように送り付けて一緒に食べるのも可能なのだと気づきました。
共有するのは時間だけでいいかな、といまは感じていますが、さらに人恋しくなったらそちらも選択肢に入ってくるかもしれません。
普段なかなか食べない物をお取り寄せしてみるとか。その感想をしゃべるのも楽しそうです!
「21皿め 夏・山・カレー」
初読の際、最も衝撃的だったお話。この物語だけ何度も読み返してしまったほどでした。
驚くことなかれ。セリフの9割がタイトル通り、「夏」「山」「カレー」なのです。

夏!

山!

カレー!
そのリズムに乗せられてずんずん進んでいくと、ある家族の歴史をたどることができるのです。同時に一人の少女の成長物語でもあるのです。
夏の記憶はいつも、山の中で食べるカレー。

夏の印象的な記憶はありますか?
“家族の記憶”にこだわるなら、筆者も夏は山に行っていました。毎年、毎年。
父がアウトドア好きなので。
そういえば……カレーを作って食べたこともあります。目玉焼きを乗せて食べるのが好きでした。
夏、山、カレー。
そのリズムは、自分の中にもあるものでした。