ネタバレなしで書こうとしていたのですけれど、無理でした。
がっつり物語のネタバレ、演出のネタバレ有りで語ります。
- 原作を読んでいない方
- 舞台を観ていない方
ご注意ください。
読み進める方へ
記憶を頼りに綴っています。間違っている場合がございます。

こいつにはこういう幻が見えていたのだな
とおもって、スルーしてください。あまりにも酷かったらDM等でこっそり教えてください。
また、舞台の観方がマニアックです。
メタ的な……役者さんとして云々、演劇として云々、と語ってしまいます。
それでも大丈夫な方だけ、よろしくお願いします!
かがみの孤城
2018年8月にはじめて読んで感動して、その年一番好きになった本。
2020年8月にふたたび読んで感動して、初読と同じことばをおもわずつぶやいてしまった本。
読み終わった……。
怖かったけれど、楽しかったよ、〇〇ちゃん……。ありがとう。
*
2020.08.10(月)
『かがみの孤城』
辻村深月さん
ポプラ社#再読 #読了 pic.twitter.com/yGspV9aL1N— 織(しき)◆しきおりつづり (@shikioritsuzuri) August 9, 2020
いじめられたわけではないけれど、小学生の頃に学校に行かなかった経験があります。初読当時はレールを外れてしまった不安に怯えて、前年抉られたトラウマの傷が痛くて、「社会」が怖くてたまりませんでした。
そんな自分だったから、この物語は、心に深く刻まれました。
一番好きなキャラクター
オオカミさま……! 舞台公式のお写真で、彼女を見た瞬間鳥肌が立ちました。
原作の表紙を再現したポスターはもちろん、机の上に座っている全身のお姿……「嗚呼、オオカミさまだ……」と感じました。
かわいい。衣装かわいいです。
衣装担当さまありがとうございます……!

彼女が舞台に立っただけで泣いてしまうかもしれない。
実際に観て、胸がいっぱいになりました。
動きもしゃべり方も理想のオオカミさま。偉そうでちっちゃくてもふもふ。わたしが大好きな要素が詰まっています。
オオカミさまがこころちゃんを鏡の中に引き込むところの演出がすきです。
何度も確かめたのだろうな、と感じるスムーズな動き。完璧。
「好きな童話は?」
きょうだいの演出を大切にしてくださっているのが伝わってきました。
ふたりがスポットライトに照らされているシーンはぐっときました。舞台オリジナルのシーン。無言だけれど、知っている人には伝わる、彼らの関係性。
わがままを言うならば……。

わたしが大好きなシーンも欲しかったですー!
p.470&p.540
怖がらせちゃって、ごめんね。
だけど、楽しかった。
亡くなる直前のお姉ちゃんのことば。
これに対して、読了後2回とも同じような感想をツイートしたのです。
このシーンありました? このセリフありました?
わたしが見逃していただけならばDVD購入不可避ですね。
ナカノヒト
もうひとつ確認したいこと。
わたしの勘違いでなければ、途中、オオカミさまの中身が変わっていましたよね……?
過去のきょうだいのシーン。
お姉ちゃんが、お姉ちゃんの姿で出てきた唯一のシーン。そこにはお姉ちゃん(たぶん今までオオカミさまを演じていた役者さん)と、オオカミさま(たぶんお面をかぶっているのは別の役者さん)がいました。
このときのオオカミさまは無言だったので、舞台ではよくあること、とおもっていたのですけれど……。
そのあとの、アキちゃんの過去のシーンで出てきたオオカミさま、そのまま別の役者さんだったとおもいます。でもセリフがしっかりありました。
衣装を着替える時間を考えるとそのほうがスムーズなのはわかるのですけれど、「しゃべっていいの?」と驚きました。
いつもツンツンしているオオカミさまが助けてくれる優しいシーンなので、優しい言い方でも違和感があまりなかったです。通常のオオカミさまはハキハキと力強く話していたので、「あれ?」とおもいました。
- 声が違う
- 身長が違う?
- 動きが違う……?
そう感じたのですけれど、でも、ここまで言って間違っていたらどうしよう恥ずかしい……。どなたかわかりますか……?
「覚えていたいよ」
舞台で好きなシーン。きょうだいが別れるところ。
大切なシーンだからこそ、ここの“間”はオオカミさま任せだったのですね。
BGMが盛り上がって、すぐに下がらなかったことから、「嗚呼……これはオオカミさまの合図待ちか」と気づきました。あの音量では役者さんのお声をかき消してしまうから。
彼女が顔をまっすぐに向けた瞬間、音が変化しました。
(フェードアウトかカットアウトか音量を下げただけだったか忘れたけれど)
(音響やりたくなりますね)

善処する。
このセリフ、大好きです。
原作では鏡をくぐったリオンくんが振り返ったとき、少女はお面を外して微笑んでくれます。
舞台では去っていくリオンくんの背を追いかけて、オオカミさまが走り寄って、でも向こうには行けなくて……、それが切なくて号泣しました。
すべてがわかるとき
最後らへんの、アキちゃん関係の演出がどれも好きです。
p.490
生きてなんて、いたくない。
生きられない。
アキちゃん……。わたしも。
わたしも生きたくなかった。生きられないとおもっていた。
「大人」になんて…………。
「大人になっていいんだよ」
いままでの人生で、たいていのことばが受け入れられませんでした。生きることを押しつけてくる人たちのことばはむしろ、息が苦しくなるものでした。反発してしまうお子ちゃま。
いまも、理解してもらえないことが多々あり、つらいです。
けれど、この物語のことばはふしぎと、目を耳をふさごうとはおもいません。
大丈夫、と寄りそってくれるそのあたたかさに安心します。みんなの苦しさを知っているから、薄っぺらいことばだと感じません。
“願いの部屋”から引っぱり出すときにこころちゃんが掛けたことばを、
こころちゃんと出会った大人のアキちゃんの後ろから、子どものアキちゃんが呼び掛ける。

泣く。
年が違う話
初読の際、混乱した種明かし。マサムネくんの仮説、パラレルワールドを信じきっていたので、頭が追いつきませんでした。
舞台ではきちんと並んでくれて、視覚から伝わってきて、わかりやすかったです。

フウカちゃん頭良くて助かります。
うるう年の話が舞台版ではカットされていました。ふたりだけ孤城に来ていたエピソード。原作では伏線のひとつでしたけれど、ややこしくなってしまいますからねえ……。
2020年。
小説が発売されたとき、わたしがはじめて読んだときには未来だった年を、いま生きているふしぎ……。
ウレシノくんの年まで、あと7年。
大人と子どものアキ
この物語のキーパーソン、喜多嶋先生。彼女は、こころちゃんが追体験するみんなの記憶に出てきます。まったく違う年齢で。
それをどう表現するのか気になっていました。
- 上着等、衣装に変化をつけていたこと
- しゃべり方をすこしだけ変えていたこと

なるほどなー
何も知らない人が観たら、同じ日の出来事ではないから変えているのか、と捉えそうですね。あるいはまったく気にならない。まさか何年も、何十年も違うとはおもわない程度の伏線。
知っている人はもちろん、「そうですよね」とうなずく演出。
並んだふたりの“アキ”。
交互に話し、じんわり同一人物だということが伝わってきて、同時にしゃべったときハッとするすてきな演出……。彼女の人生を知っているにもかかわらず、感動しました。
ざわつく心

わたしならこう演じたい……
- もっと間を使いたい
- もっと感情のスピードに緩急をつけたい
- もっと叫びたい
観劇するたび、そわそわしてしまいます。
けれどもう、演らないって決めたから……。生意気なことを言わずに、我慢してじっと観ているべきなのですよね。
余白が欲しい
でもひとつだけ。

間が欲しいーーー!!
原作の重要なエピソードをほとんど切らずに入れてくださったので、ただでさえ長くなってしまうから、あまり時間をかけられないのはわかりますけれど……。すこし気持ちがついていけないところがありました。

読んでいるからわかるけれど、わかるけど、ちょっと待って……!
ラストシーンは比較的時間を取ってもらえているようでした。なので安定していました。
もしも演じるならば
もう演らない。
その気持ちは変わりません。
ただ、もしも演じるならこのキャラクターをやってみたい、と考えてしまいます。

わたしは、「真田美織」を演りたい。
主人公のこころちゃんをいじめた張本人。自分の価値観を重視してまわりの人間を振り回して気に食わない奴をバカにして自分は愛されるべき人間だと確信している人間。
厭味ったらしく演じたい……。観た人全員に嫌われるくらい、“うざい人間”に成りたい。
文句なしに怖かったです。すてきです。
特に好きなのは手紙を読むシーン。
- 嫌々書いたこと
- 自分を中心に考えていること
きちんと伝わってくる演技力すばらしい。
自分と違う人間を演じるのは、むつかしいけれど楽しいです。個人的には、狂っていればいるほど、楽しくて仕方がありません。
「わたし」ではできないことを、舞台上でやりたいです。
舞台で生きるのは「わたし」ではないから。
個人的な衝撃の事実

こころちゃんのお母さん役の人、知っている。
声も演技も知っている気がする……。
とおもっていたら、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』に出演されていた方なのですね!?
伊田先生役、多田直人さん
おふたりは「ナミヤ」でコソ泥チームを演じていた方々。演技巧い。
(私信:友人ごめん、諸々勘違いしていました。不正確な情報を伝えてしまいました。)
ってことは、「15 Minutes Made Anniversary」でたった15分、たった2人の芝居でわたしを泣かせた人ですね!!?
ど、動悸が……。
わたし、15 Minutesのラスト、手を伸ばす瞬間がとてもとても好きです。あの光が美しくてこわくて……涙が止まりませんでした。
その後の地蔵中毒さんで涙が引っ込んだけれど。
『かがみの孤城』でも出演してらっしゃいました。スバル役の方……!
渡邊安理さん。
そして、実生活ではご結婚おめでとうございます。

全部つながった……!
ごめんなさい、人さまのお名前とお顔を覚えるのが本当に苦手で……!
ごめんなさい。でもあなたさまの演技がとても好きです。

逆に何故気づかなかったの……
演劇が好き

まだ語るの?
と言われそうですけれど、最後にざっと全体の感想をば。
- 大きなお城の舞台装置(しかも“願いの部屋”は可動式)
- オープニングのダンス
- いくつも吊るされているライト
- 鏡の欠片を表現した光
- タイミングが完璧なSE(効果音)
- セリフがなくとも役の人間として生きる役者さんたち
- 存在しているのに気にならない黒子、からの役への切り替え
- 回想シーンのおばあちゃんの演技力の高さ
(仮面をつけていたけれど、あのお方どなたですか? オオカミさまの役者さん? 巧い)

嗚呼、演劇だ……
これだけ語っているくせに理想が高い、と言われそうですけれど、100%気に入った作品ではなかったです……正直なところ。
それでも、観に行って良かったです。
今年、「演劇をやる」と決意することは、とても難しい判断だったとおもいます。やる側も観る側も、どうしても「いつもと違う……」と戸惑う部分が出てきました。
それでも、演劇の空気を感じることができて、とてもしあわせでした。
ありがとうございます。
『かがみの孤城』を舞台作品にしてくださって。
幕を上げてくださって。
みんなのことを見届けることができて、良かったです。