ぬれねずみの少女

夢のきおく

傘に穴が開くのではないか、と不安になるくらい強い雨がどしゃどしゃ降っている。だれもが足早に目的地を目指している。
びっしょり濡れてしまった靴下が気持ち悪い……。早く帰りたい。
わたしも歩くスピードを上げようとしたとき、声が聞こえた。だれかを呼ぶ声。助けを求める、弱々しい声。

乱雑にゴミが突っ込まれている空間に、ちいさな少女がしゃがみ込んでいる。傾いている屋根と壊れたベンチを見て、もともとはバス停だったのかもしれない、と感じた。時刻表はないけれど。

「おかあさん」
少女のか弱い声は、雨音にかき消されてしまう。彼女のことを探している人は、近くに見当たらない。
いつから此処にいたのだろう。うつむき、自分の声は届かないのだ、と絶望していることが伝わってくる。それでも、助けを求める相手はその人以外思いつかないのだろう。

小走りで近づきながら、大きめのトートバッグから、ブランケットを取り出す。大好きなハンドメイド作家さんがデザインした、お気に入りのもの。
ちいさな肩にそっとブランケットをかけた。他者が近づいてきたことに気づいていなかったのか、びくっと大きく身体が震えた。顔を上げることもできずにいる少女の手に、無理矢理、傘を持たせる。

一歩下がって、そのまま離れようとしたとき、カップルらしき男女が、タオルを手に近づいてきた。少女を包み、声をかけている。助けてくれる人がいるなら、大丈夫かな。すこしほっとしたけれど、少女はこわばった表情のまま、何も言えずにいる。
やっぱり心配かも……と離れることを躊躇していたら、ちょっとだけ、表情が柔らかくなった。その次の瞬間には号泣していたけれど。

2019年10月11日(金) 夢
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